まねきTV

皆さん、去年末くらいに話題になった「録画ネット」をご存知でしょうか?
録画ネットとは、

 「録画ネット」とは、簡潔にまとめるならば、海外からPCとインターネットを使って、日本に置いてあるテレビパソコンで録画した番組を見る、というサービス(http://www.6ga.net/)である。このサービスを運営するのは、有限会社エフエービジョンという会社だが、ここでは「録画ネットを運営する会社」という意味も含めて、便宜上「録画ネット」と呼ぶことにする。

 事の発端は、この録画ネットに対して2004年7月30日に、NHKと在京民放5局から「サービス停止を求める仮処分の申し立て」の申請が東京地裁に起こされたことに始まる。この申し立ての根拠は、この録画ネットが放送番組の複製・送信サービスであるから違法である、という点にあった。

 これに対して録画ネット側は、このサービスはテレビパソコンを預かって代行管理するハウジングサービスであり、違法性がないことを主張したが、2004年10月7日に、サービス停止の仮処分申請が認められた。以降録画ネット側が異議申し立てを行なったが、東京地裁は録画ネット敗訴という決定を下した。2005年6月1日のことである。

 録画ネット側はこの判決を不服として抗告したため、今度は舞台を知的財産高等裁判所知財高裁)に移すこととなった。そして11月15日に知財高裁の決定が、抗告棄却。再び録画ネット敗訴という判決となったわけである。

 さらに録画ネット側が抗告するとなると、次は最高裁ということになるが、本コラム執筆時点では抗告するかどうかはまだ明らかにされていない。このまま抗告されなければ、この「事件」はこれで集結ということになる。

 録画ネットのサイトには、この一連の裁判に関する経緯と資料がまとめられている。興味のある方は、順に読んでいくと詳しく経緯がわかることだろう。本コラムでも両者の言い分を時系列的に検討することも考えたが、要するにシーソーゲームであるため、あまりにも煩雑になりすぎるようだ。ここでは最終的な判決を基軸にして、この事件の本質を考えることとする。

はてまた、一方、「まねきTV」というのをご存知でしょうか?
まねきTVとは、

ソニーロケーションフリーロケフリ)用ベースステーションを個人ユーザーから預かり、設定済みエアボードを使って海外出張先から番組を視聴できるようにするもの。
http://www.manekitv.com/index.html

この2つのサービスの大きな違いは、サービス業者が、パソコンを預かるのか、LocationFreeをあずかるのか、の違い。
アナログ放送をエンコードしたファイルとして転送する録画ネットは、結局、違法判決。
しか〜し、LocationFreeで、エンコードした映像をストリーミング的に配信するのは、
今のところ合法判決。

ネットテレビ:NHK中止申請に「違法でない」 東京地裁
 「インターネット経由で、日本のテレビ番組を海外でも視聴できるサービスを不特定多数に提供するのは著作権法違反」として、NHKと在京キー局5社が、サービスを運営する「永野商店」(東京都千代田区)に番組提供の中止を求めた仮処分申請で、東京地裁は4日、申し立てを却下した。高部真規子裁判長は決定理由で「不特定対象のサービスとは言えず、違法ではない」と指摘した。

 問題となったのは、出先のパソコンなどにネット経由で番組を送信できるソニーの市販装置を、所有者から有料で預かり、日本の番組を海外の顧客に提供する「まねきTV」というサービス。約50人が契約している。

 テレビ局側は今年2月に仮処分申請し「装置の個人利用は問題ないが(複数の契約者に同時に送信する)会社の行為は不特定多数が対象と言え、テレビ局が持つ著作物の送信可能化権を侵害する」と主張。だが高部裁判長は、特定の装置から送信を受けて番組を視聴できるのは装置の所有者に限られることから「永野商店は装置の管理を代行することで、契約者の個人利用を容易にしているにすぎない。個人利用が違法でない以上、サービスも問題ない」と退けた。【高倉友彰】

毎日新聞 2006年8月5日 10時40分 (最終更新時間 8月5日 10時43分)

僕には、技術的な違いはわかるのだけれど、ユーザメリットの観点から違いが見出せていない。
このままでは、ユーザによって受けられるサービスは同等でも、それを実現する方法(技術)が異なれば
合法か、違法かに分かれてしまうという現象が生じる。
我々、技術に携わるものでも、関連する法律、判例には注目しておくべきだと思った。

空想法律読本〈1〉 (空想科学文庫)

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